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楽器の選び方

楽器を選ぶことは楽器店を選ぶことでもある。初めて訪れる楽器店で何をすればよいのか、どうすれば自分にふさわしい楽器にめぐり合えるのか、楽器店との付き合い方も含めて考えてみよう。

10万円の楽器に良いものが出てきた

  • 10万円前後の楽器は数多くあるが、楽器店によって扱っているものは異なる。*1それぞれに特徴のあるものだが、長いお付き合いになる可能性があるものだし、安い買い物ではないのだから慎重に選びたいものだ。

このクラスの楽器を大別すると 

  1. 日本、ないしは海外のメーカーの量産品で複数の楽器店や通販などで購入するもの
  2. 小さな工房、ないしは個人の作品で特定の楽器店で購入できるものになる。日本の楽器は、メーカーが小売店に直接卸していることが多く、海外のものは輸入代理店が輸入しているケースと、楽器店が直接買い付けているケースに分かれる。どちらが良いかは一概に言えないが、販売ルートによって若干の値段の差が出ることもある。

まずは慎重に店を選ぶ

  • 楽器を購入するときに難しいことは、楽器店の選び方。基本的に楽器店はプロで購入者は素人なのだから、信頼して任せられる楽器店を選びたい。弦楽器は非常に繊細なもので、傷つきやすく、またメンテナンスも必要だ。いざというときに安心して相談できる店で購入しておけば、後々もスムーズにいく。その店で購入した楽器以外のメンテナンスを嫌がったり、修理に高い料金を請求する楽器店も少なくない。また残念ながら、とても危ない商売をしている楽器店もあり、後で泣きをみることになる可能性もないとはいえないので、情報をじっくりと集めたい。
  • 有名な大きな楽器店は、こうした意味である程度安心できるが、じっくりと相談に乗ってもらうにはふさわしくない可能性がある。小さな専門店は、信頼できる店であれば、メンテナンスや買い替えの相談にもきめ細かく対応してもらえるだろう。いずれにせよ、ヴァイオリンのメンテナンスがしっかりとできる技術者が常駐している楽器店で購入することが望ましい。
  • 小さな専門店は、初めての人にとっては敷居が高いものに感じられるだろう。雑居ビルやマンションの一室で営業している小さな店も多く、飛び込むにはかなり勇気がいるかもしれない。しかし、良心的な商売をしている楽器店の利幅はそれほど大きいわけではなく、数年で自社ビルが建ってしまうような商売をしている楽器店より安心できる可能性も高いことが事実だ。

来店前:電話で希望をハッキリ伝えよう

  • 訪れる楽器店を決めたら、電話をして約束を取ることを勧めたい。その際に、予算と目的をはっきりと伝えよう。良心的な楽器店であれば、約束の日までに予算に合う楽器と弓を調整して準備しているはずだ。安いものだからと臆する必要はない。予算も、上限がはっきりしているときにはその旨を伝える。「トータル20万円くらいで」と言うと、20万円を少し超えたものまで出されてしまうだろう。

来店時:試奏はしっかり

  • 実際に楽器店を訪れると、(予算にもよるが)いくつかの選択肢を用意していることがほとんどだろう。その中でふさわしいものを選ぶことになる。その際、楽器も弓も十分に試奏してみることが望ましい。もちろん、自分でできないときには、同行してもらう先生やベテランに弾いてもらう。一人で行かざるを得ないときには、楽器店にその旨をあらかじめ伝えておき、試奏してもらえるかどうかを聞いておくべきだと思う。試奏するに当たっては、できるだけ広い範囲の音域を試してみること、各弦の違いを聴くこと、音の立ち上がりや明晰度を聴くこと、音量と響きのバランスを比べること、を意識したい。
  • 弓の選択は、ある意味で楽器を選ぶことよりも難しい。弓は1本ごとに性質、性能がまったく異なるので、ある程度わかる人が試奏しないと判断できないからだ。性能の違いはカーボンでさえある。筆者も1本カーボンを持っているが、複数用意してもらった同じカーボンボウを店で試奏したときに、聴いていた店員がびっくりするほど音質に差があった。もちろん、性能もまったく異なるので、できるだけ複数のものを比べてほしい。

予算:付属品を忘れずに

  • 楽器を始めるために最初に楽器店で最低限必要なものは、楽器本体と弓、必要であれば肩当て、松脂、ケースだ。楽器を拭く布も必需品だ。シルク製の布などでも代用できる。注意するべきものは肩当てだ。楽器を買うときに「どうせまだ弾けないから」といって肩当てを適当に選ぶ先生もいまだにいるが、持つ格好をして体にフィットするものを選びたい。先生やベテランに同行してもらえるなら協力してもらおう。一人で行かざるを得ない場合は、必ず楽器店で相談してみてほしい。その時に、「肩当てはどれでも大丈夫ですよ」とか、体に合わせもせずに何かを勧めるようだと問題だ。
  • 楽器を選ぶことは楽器店を選ぶことでもある。初めて訪れる楽器店で何をすればよいのか、どうすれば自分にふさわしい楽器にめぐり合えるのか、楽器店との付き合い方も含めて考えてみよう。

*1 自分に合った楽器店選びが大切。